資源循環社会課題 KAMIKURU(カミクル)プロジェクト

私たちが始めた新たな地域共創と環境への取り組みの話

「KAMIKURU」プロジェクトでは現在、北九州市で使用済み用紙の回収、アップサイクル品の製作・供給に取り組んでいます。今回は、エプソンのPaperLabを使用してアップサイクル品を製作しているNPO法人「わくわーく」と、SDGsを授業に取り入れている福岡教育大学附属小倉中学校の様子をご紹介します。

NPO法人「わくわーく」小橋 祐子 理事長

障がいのある方たちの雇用と新たな出会い、これからももっと広げていきたいですね

私たちはNPO団体「わくわーく」として障がい福祉サービス事業を運営しています。現在、「KAMIKURU」プロジェクトの一環として、再生紙を使ったアップサイクル品の製作を行っています。

製品は主に、事業所で作っているお菓子のパッケージや名刺、紙ファイル、紙袋ですね。紙袋には小倉城や河内藤園の写真をプリントして、北九州市をアピールしようと思っています。県外の方はもちろん、外国からの観光客にも喜んでいただけるんじゃないかなと思います。

今はまだ試作の段階ですが出来上がりを見る限りでは、自分たちで見ても割といいんじゃないかな。自己評価高めですね(笑)。紙袋としてだけじゃなく、使った後ももう一度別の形になって二次的に使えるような工夫も考えて、少しでも楽しく喜んで使ってもらえたり、環境問題に関心を持っていただくきっかけになればと思います。

再生紙を利用したアップサイクル品

現在は4名のスタッフが2~3人ずつ交代で作業を行います。

作業の内容は大きく分けて、1つ目が回収してきた紙の仕分け、2つ目がPaperLabで再生紙を作る、そして、再生紙を使って製品を作るの3つです。

市役所や企業・学校などから古紙を回収するのですが、中にはホッチキスが付いていたり、折れ曲がっていたりするものが混じっていて、そのままではPaperLabに入れられないため、まずは古紙を一枚一枚チェックして、ホッチキスの部分を切ったり、修正テープが貼っているものをよけたりします。そうして仕分けした古紙をPaperLabに入れて、再生紙を作ります。PaperLabはとても有能で、色々な色の紙を作ることができるし、厚さも10段階で調節できます。

  • 古紙の仕分け作業の様子
  • ホッチキスがある場合は取り除く
  • 色紙も再生でき、厚さも10段階で調節可

自分たちのペースで楽しく工夫してます

NPO法人わくわーく 渡邊 史織さん

再生紙ができると、それに小倉城や河内藤園の写真をプリントし、一枚一枚手で折って紙袋を作ります。こういったものを作るのが得意な人もいますし、苦手な人もがんばって挑戦していますね。そういう人のために、みんなで色々なアイディアを出し合って考えています。仕分けをスムーズに行うためのボックスや、1cmから4cmまでの折り幅で作った自作の定規などがそうです。こういったアイディアを活用しながら、自分たちのペースで楽しんで作ってもらいたいと思います。

こうやって作っている紙袋ですが、使いやすい大きさや写真の見せ方、裏面を使った二次利用などを考慮して、折り方をいろいろ試した結果、今の形になりました。

渡邊さんお手製の定規
作業は一枚一枚丁寧に

新たな出会いでモチベーションアップ

「KAMIKURU」プロジェクトに参加して良かったなと思うのは、ここに通ってこられる障がいのある方の雇用の創出と賃金をアップが出来ているということですね。そして、事業所以外の方々と繋がることができたというのも大きな喜びです。プロジェクトに参加する前は、事業所や関係者以外の人との出会いはほとんどありませんでした。でも今回「KAMIKURU」プロジェクトに参加することで、企業の方や地元の学生さんたちとの繋がりができ、みんなのモチベーションが上がっています。

これからも「KAMIKURU」プロジェクトを通じて、こういう活動が他の福祉サービス事業の方たちにも広がり、もっと大きな繋がりができるといいなと思います。

福岡教育大学付属小倉中学校 柴田 康弘 教諭

「KAMIKURU」プロジェクトを通して未来で使えるガチな学びを体験

福岡教育大学附属小倉中学校では、学校で出た古紙をNPO団体のわくわーくさんに回収していただき、PeperLabで作られた再生紙でアップサイクル品を作るというプロジェクトに参画しています。どういった製品を作っていくかを授業の中で構想し、アイディアや企画書としてエプソン販売さんやわくわーくさんに提案して、製品としての実現を目指しているところです。ただ製品化して終わりではなく、それをいかに実社会で使っていただくか、アップサイクル品としての価値を人々に伝えていくためにどんなプロモーションが必要かというところまで考えます。例えば体育の授業では、CMを想定してダンスでそれを表現して動画を作成するとか、英語の授業では市内在住の外国人の方にいかにアピールするかなど、教科の垣根を越えた一連の学習を行っています。

「KAMIKURU」プロジェクトの授業風景

私たちは、本校の教訓「創造実践」にあるように、子どもたちに必要なものは、未来の社会を作るプレイヤーとして真の力をつけること「=ガチの学び」だと考えています。その中でSDGs推進の一助となるような学習を展開することは、SDGs未来都市・北九州市にある本校としても目指す方向が同じであり、ぜひそのプロジェクトに子どもたちと一緒に関わらせていただきたいと申し出た次第です。

生徒の成長を間近で実感

古森 亮太 教諭

もともと本校では生徒会活動として学校の古紙を回収していたのですが、使えない古紙はゴミとして捨てていました。けれど廃棄されるはずだった古紙がPaperLabで再生されて戻ってきた(循環された)紙を受け取ったときの生徒の感動がすごく新鮮で、今回のプロジェクトに参加させていただいて本当に良かったと思いました。

子どもたちにしても、プロジェクトを通して、一つの教科では解決できないことも他の教科を生かすと前進するという体験を重ねているようです。例えば理科の授業でも「国語の学習プリントを使いたいから取りに行ってもいいですか」という生徒が出てきて、その中で理科としての学びが進んでいくような姿が増えました。

このように「KAMIKURU」プロジェクトを通して、子どもたちもすごく前向きに、積極的に生き生きと活動をして学びを進めています。私たちとしても学校という枠を越えて、社会の中での教師という役割を実感させていただき、大変感謝しています。

  • [保健体育] ダンスの表現コンセプト
  • [保健体育] 創作ダンス
  • [国語] SDGsの伝え方を考える

ガチな学びだからこそできる挫折体験

学びの基本は4人グループで

「KAMIKURU」プロジェクトの授業では、4人グループを基本にして学びを進めています。4人の中で理解度が違えば、よく分かってる子が他の子に教えたりして平準化が図れるんですね。さらにグループ間でも交流があるので、評価し合ったり意見をシェアしたりして、みんなの理解度がある水準まであがるように手助けしています。

また実際に学びを進める中で、ふつうの授業では体験できないような失敗もありました。学校では一生懸命やれば、たとえ目標を達成できなくても褒めてもらえるけれど、今回はエプソン販売さんやわくわーくさんとの共同事業なので、このままでは商品化できないよっていう現実の厳しさに直面することも多かったと思います。今回のプロジェクトに携わる方々はゲストじゃなくて同じプレイヤーです。だからこそ厳しいことも要求されるし、全てがオールOKにならない「ガチの学び」を体験できるのだと思います。そういう挫折体験の方がこのプロジェクトには大事かなと思いました。

先日、エプソン販売さんからイベントで使うクイズの問題を考えてほしいというご依頼をいただきました。テーマは「北九州市の環境への取り組み」または「「KAMIKURU」プロジェクト」です。1学年3クラスの生徒全員で考えた結果、なんと500問近いクイズが集まりました。「SDGsは何年までに達成する目標でしょうか?」「PaperLabで作った再生紙の特徴は?」など大多数の生徒が一人で何個も作ってくれました。もちろん全てを採用することはできないので、切り捨てられる方が多いのですが、こういう現実の厳しさを学ぶことも生徒にとって大切なことだと思います。

結果がわからないから楽しい

学級新聞でも積極的に発信を

「KAMIKURU」プロジェクトに参画してどうだったかと生徒に感想を聞くと「学校では学べないような、リアルな社会に関わる学びができた」「再生紙の大切さがわかった」「SDGsとの関わりが深くなったのでよかった」などの声が聞けました。

子どもたちも本物の企業さんと触れあうから、真剣にならざるを得ないですよね。今までは生徒じゃなくて先生が企業さんから話を聞いて、それを生徒に伝えていたのですが、それではガチの学びにならないんですよ。教科書で教える授業なら進み具合がはっきり分かるけど、「KAMIKURU」プロジェクトはゴールが見えない。こうしたいという目標はあるけど、それがどう転ぶかわからないんですよ。だからこそ面白い。

そして子どもたちが社会に出たときに、あのプロジェクトをやっていてよかったと思う瞬間が来てほしいですね。プレゼンテーションをするとか人に思いを伝えるとか、新しいものを作るとか、そういうところに価値を見出す子どもがいるっていうのは私たちにとってもプラスになりますし、大きな喜びです。

実際の活動の様子を動画で見る

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