「KAMIKURU応援クーポン」も導入更なる地域活性化へ向けてデジタルプラットフォーム活用で進化。

「KAMIKURU(カミクル)」プロジェクトは、地域の自治体や企業、学校など多くの方々が推進している「紙の循環で地域共創を促す産学官民連携プロジェクト」です。
今回は、プロジェクトのこれまでの取り組みと、DX化も交えたこれからの取り組みについて、プロジェクト賛同企業の株式会社ドーワテクノスの糸山さんと、「KAMIKURU」プロジェクトの運営メンバーであるエプソン販売株式会社の大野さんに話をお聞きしました。
説明図

賛同団体は30を超え、環境負荷低減や雇用機会の創出も実現

エプソン販売株式会社

大野 裕寿 さん

賛同団体は30を超え、環境負荷低減や雇用機会の創出も実現

大野さん「KAMIKURU」プロジェクトは「紙の循環から始める地域共創プロジェクト」として2020年10月にスタート。2022年までに、賛同団体数が20以上、古紙回収量40万枚以上という目標を掲げました。古紙を集めて再生するだけでなく、その再生紙からアップサイクル品と呼ばれる付加価値をつけた商品をラインアップ化し購入いただくスキームを実現しています。
プロジェクト発足後、2024年2月現在では賛同団体数は35へと拡大し、70万枚以上の古紙を回収し再生紙の原料としています。

通常の製紙工程と比較し、水の消費量は159万リットル以上節約できており、環境負荷低減に貢献しています
一方、古紙の回収仕分け、アップサイクル品の制作を担っていただいている「NPO法人わくわーく」では、施設を利用する3名の障がいのある方々の活躍する場を生み出しており、新たな雇用機会の創出にも繋がっています。
今後、さらに活動を広げていくために業務フローのDX化が必要だと考え、参同団体をデジタルプラットフォームで繋げ、古紙の回収依頼や日程調整、アップサイクル品の購入などをシームレスに行える環境を構築し、現在段階的に運用を進めています。

※前提として、市販の用紙1tに対し、PaperLab A-8000で再生した用紙1tの環境効果を比較(市販の用紙の原料となる木の育成には水が消費されることを含む)。その上で、東京都市大学環境学部 伊坪研究室 試算。国立研究開発法人 科学技術振興機構:「製品ライフサイクルに立脚した環境影響評価基盤の構築と社会実装によるグリーン購入の推進プロジェクト」算出値引用。流通・小売り段階のCO2 排出量、水使用量を付加。

「KAMIKURU」プロジェクトへの参画をきっかけに全社的な意識改革を図りたい

糸山さん「KAMIKURU」プロジェクトを知ったのは、「北九州SDGsクラブ」で使用されていた登録証が、エプソンのPaperLab(ペーパーラボ)で作成された再生紙で、興味を持って調べて見たところ「KAMIKURU」のサイトにたどり着いたのがきっかけです。
当社は2021年3月にSDGsプロジェクトチームを立ち上げ、2022年10月に設立したホールディングス会社でもSDGs活動を推進していく方針を掲げています。業務で使用している用紙やリサイクルへの取り組みが各社バラバラであったため、「KAMIKURU」プロジェクトへの参画をきっかけに、オフィスに古紙回収ボックスを設置しました。プロジェクトで使用している用紙に合わせる為に、業務で使用している用紙や発注方法が各部門でバラバラであったものを統一した結果、コスト削減にも繋げることができました。

「KAMIKURU」プロジェクトへの参画をきっかけに全社的な意識改革を図りたい

株式会社ドーワテクノス
管理部 人事戦略室長
SDGsプロジェクトチームリーダー

糸山 純子 さん

社員向けワークショップの開催や社内報でSDGs情報を発信したり、SDGsに関する啓蒙活動を継続して実施しており、徐々に浸透してきたことを実感しています。
また、「KAMIKURU」プロジェクトに参画することにより地域の障がいがある方々の雇用機会創出に貢献できていることや、SDGsの取り組みがトリガーとなって新たなビジネスを創出するなどの効果も生まれており、「SDGs=ボランティア」という固定概念からの脱却も図ることができています。

※ほとんど水を使わずに使い終わった紙から新たな紙を生み出すことができる乾式オフィス製紙機。

社内向けSDGs啓蒙活動

社内報「STEP NOW」にて活動内容を報告

社内向けSDGs啓蒙活動

使用済み用紙の回収ボックスを設置

業務フローのDX化と応援クーポンの導入によるプロジェクトの進化

大野さん「KAMIKURU」プロジェクトに賛同いただいたみなさんからの古紙の回収およびアップサイクル品の購入などは、わくわーくが都度電話やメールなどによるアナログ的な処理を行っており、回収データの蓄積や需要予測などがなかなかできていませんでした。
また、業務フローのDX化により工数やコストを削減することで、賛同団体の業務負荷も低減することも計画しています。
具体的には、賛同団体とわくわーくの間で行われる回収依頼やアップサイクル品の注文をシステム上で処理できるように改善し、同時にアップサイクル品の購入に使える「KAMIKURU応援クーポン」を導入することで参画しやすい環境を整えていきます。
このように、古紙回収履歴やアップサイクル品の発注履歴・クーポン購入履歴などを基に、賛同団体ごとにデータ化することによって貢献度を可視化し、賛同状況に応じた環境貢献値などを報告することが可能になってきます。

「KAMIKURU」プロジェクトのDX化は賛同団体への
負担も減らす効果もある」と話す大野さん

「KAMIKURU」プロジェクトのDX化に期待することは?

糸山さんアナログベースだとSDGsの効果や貢献度が不透明であり、社内への浸透も時間がかかります。回収依頼やアップサイクル品購入に関する作業工数も確実に減ると思いますので、DXによる効率化は大歓迎です。
弊社はアップサイクル品としてわくわーくに名刺を発注していますが、どれだけの社員が、今までの通常の名刺から「KAMIKURU」プロジェクトのアップサイクル名刺に変えたか、ということがSDGsプロジェクトチームの活動効果を測れる唯一の数値データでした。
ですが、環境貢献や雇用創出など「KAMIKURU」プロジェクトの効果が数値化されることで、社内でのモチベーションも上がるのではないかと期待しています。

使用済みの用紙を名刺にアップサイクル!!

経営層以下一丸となって社会課題を解決するビジネスを推進

糸山さん社内のSDGsプロジェクトの一環として、事業開発部が中心となり新たなビジネスに挑戦しています。例えば身近な場所で誰でも高品質な野菜を簡単に生産できる水耕栽培システム「アグロット」や新しい凍結技術を搭載した超高速凍結機「ZERO-03」など、社会課題を解決する事業をスタートしています。
また、「KAMIKURU」プロジェクトは、さまざまな企業と交流が持てる地域共創の場でもあり、賛同団体同士の「繋がり」を、新たなビジネスや地域貢献活動の創出にも生かしていきたいと考えています。もちろん「KAMIKURU」プロジェクトを通して、雇用の創出や未来を担う子どもたちへの体験機会の創出などの地域貢献活動も継続していきます。

「アグロット」をご紹介いただいた
ドーワテクノス 濱田さん(左)

小規模植物栽培システム 「アグロット」畳1帖サイズの省スペースに設置し、LED照明と栄養を含んだ水だけで無農薬の高機能野菜やハーブを育てることが可能

DX化をひとつのステップとして北九州以外の地域へ展開

大野さん「KAMIKURU」プロジェクトは現在は北九州エリアで活動しているプロジェクトですが、DX化を契機に、他の地域への展開も視野に入れています。本プロジェクトを題材にした環境教育の出前講座や学校訪問をはじめとして、SDGsや脱炭素といったキーワードが賛同団体のビジネスにおける会話の中のツールとして活用できるように、価値の提供を継続していく予定です。
今後も賛同団体を募っていくと共に、賛同団体とビジョンを共有しながら紙の循環から始める地域共創のさらなる浸透をめざしていきます。

プロジェクトについて

古紙の回収、再生紙や
アップサイクル品の作成を担う

NPO法人わくわーく