学校生活の思い出が詰まった
卒業証書で未来へ

「KAMIKURU」プロジェクトに参画する福岡県立中間高校では、
2年生が制作した「特別な青色の卒業証書」で卒業式を迎えていました。

卒業式の様子を動画で見る

卒業式を終えて、満面の笑顔で喜び合う卒業生の手には、
後輩が卒業生のために特別な青色で作った、
“古紙から生まれた卒業証書”が輝いていました。 「この卒業証書は私たちの思い出の結晶です。」と笑顔で語る卒業生たちは、一人ひとり出来上がりの異なる卒業証書を眺め合いながら、互いに卒業の喜びを噛みしめ合っていました。 今回はこの特別な青色の卒業証書がどのようにアップサイクルされ、制作されたか、卒業証書制作に携わった生徒たちや先生方の取り組みについて紹介します。

学校生活の思い出が詰まった卒業証書作り

中間高校は2017年12月から“なかまフットパス”という地域活性化活動に携わっており、2019年から3年間のキャリア教育を通じ「SDGsをふまえた自己表現力の育成」をスタート。SDGs委員会を発足し、校内のゴミ減量活動や校内新聞の作成などの活動に取り組んでいます。こうした活動を続ける中で「KAMIKURU」プロジェクトと出会い、学校生活から出た古紙を再生し、“再生紙で卒業証書を作る”という画期的なアイディアが生まれました。

中間高校では、『古紙回収ボックス』を設置しており、毎月1回SDGs委員がボックスに集められた古紙を回収します。回収する古紙は、校内に掲示される「GOMI-TIMES(注)」でお知らせしたり、定期的に活動の進捗をレポートするなど、さまざまな活動によって、卒業証書を作るという思いとともにリサイクルに対する意識が変わり、学校全体の取り組みとして卒業証書制作に必要な古紙が少しずつ集められていきました。
(注)SDGs委員会が発行する活動レポ―ト。

この卒業証書は、明るい未来へとつながる
希望になると思います

SDGs委員会 卒業証書制作委員長山田稜真さん

卒業証書を作ることが決まったとき、まず苦労したのが古紙集めでした。最初はなかなか集まらなくて、どうしたらよいかを委員会で話し合い、各クラスのSDGs委員に声かけをしてもらったりしました。そうやって少しずつ学校全体の意識が高まり、こつこつと集めた古紙は6,000枚以上になります。活動を知った地域の方が古紙を届けてくださったこともありました。

再生紙はエプソンさんのPaperLabで、色や厚さを自由に作成できるということだったので、卒業証書の色は、3年生の学年カラーである「青色」に決めました。青色の色味や紙の厚みについても色々な意見が出ました。これらも全て、委員会のメンバーと話し合って決めました。この卒業証書はお世話になった3年生を送り出す気持ちを込めた僕たちの努力の結晶です。 3年生の学年カラー「青色」が施された名札

SDGs委員会中川菜々美さん

再生紙で作っているので、独特のテクスチャーがあり、一枚一枚が違うんです。世界にひとつだけのオリジナル卒業証書で特別感があり、「この卒業証書をもらって良かった」と思ってもらえたらという思いで取り組みました。
この取り組みを通してわたし自身一番変わったなと思うのは、今まで簡単に捨てていた古紙に対する意識です。家にいるときでも、使えそうな紙は捨てずに裏紙として使うようになりました。このような素晴らしい取り組み、SDGsの活動はずっとずっと、未来の世界まで続いていってほしいです。

SDGs委員会豊島千遥さん

初めは古紙を使った再生紙がどういう仕上がりになるのか全然想像できなくて、紙質がザラザラだったらどうしようとか色にムラがあったら嫌だなとか心配していました。でも実際にPaperLabで再生紙を作る現場に立ち会ってみて本当に感動しました。こんなにきれいな再生紙が短い時間で、しかもほとんど水を使わず(注)に作れるなんて驚きです。

これからの時代は卒業証書もどんどんカラフルになっていくのかなと思うと、私たちが一番最初に作ったんだって胸を張って言えるし、そんな未来が楽しみでもあります。
(注)機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。

SDGs委員会 委員長佐藤蓮さん

SDGs委員会の活動を通して、自分たちの活動がこれからの未来を変えていけるということを学びました。地球環境や社会をどうやって変えていこうかと考えるのはとても楽しいし、やりがいを感じます。みんなが笑顔になれる地球を、僕たちが作るってワクワクしますよね。この卒業証書は、明るい未来へとつながる希望になると思います。

簡単に誰にでもできることをしっかりと
やってきたことが、大きな成果につながった

福岡県立中間高等学校宮野めぐみ教諭

生徒一人ひとりが自ら考え、ゴミ箱へ捨てるはずだった古紙を回収ボックスへ入れる、それをあたりまえの行動として身につけることができるようになり、このように使わなくなったものを有益なものに作り変えるという活動にまでつながったことは、大変大きな成長だと思います。

SDGsの活動は持続可能であることが大前提です。特別なことをしても長続きしないので、簡単に誰にでもできることをしっかりとやってきたことが、大きな成果につながったことをとても嬉しく思います。

SDGsや「KAMIKURU」プロジェクトを通じた
生徒の心の成長を願って

SDGs委員を中心とした「KAMIKURU」プロジェクトの活動を通して、生徒をはじめ先生方も沢山のことに気づくことができました。ここで学んだことを活かして、色々な切り口で、また世界にまで視野を広げて物事を見るようになってほしいと思います。世界にはいろいろな課題が山積みですが、自分でできることは沢山あるはずです。そういうことを見逃さない感性を持って成長してほしいなと思っています。

世界は自分たちが思っているよりも近くにあって、自分たちのあたりまえの行動を続けていくことで未来を変えていける。そう気づけたことは、本当に良い成果だったと思います。SDGsの活動を続けていくことで、これからもっと世界と繋がっていきたいと思います。

「KAMIKURU」プロジェクトに
参画したきっかけ

福岡県立中間高等学校水田大主幹教諭

SDGsには世界を変えるための17の目標があります。その中で中間高校は、12番の「つくる責任・つかう責任」という目標を選びました。そしてその目標を達成するためにまず始めたのが「ゴミ削減」です。

しかし、学校の中だけでできることには限界があります。ゴミを何かに再利用できないかと考えていたときに、紹介していただいたのが「KAMIKURU」プロジェクトです。古紙を再生して卒業証書を作ることができると聞いて「これだ!」と即決しました。

古紙回収ボックスを職員室に1台と各学年に1台ずつ割り振って、みんながボックスに愛着を持ってくれるようにと、各学年のSDGs委員の生徒たちがそれぞれボックスに絵を書いたり装飾したりしています。そうやって生徒たちみんなが「参加するぞ」という気持ちを持ってくれた結果が、こんなに素晴らしい卒業証書になりました。自分たちの集めた古紙が、思い出に残ったり利用価値があるものに生まれ変わって返ってくるって本当に素晴らしいですよね。

プロジェクトについて

古紙の回収、再生紙や
アップサイクル品の作成を担う

NPO法人わくわーく